だからアナタに殺されたい。
「そう、シルバーの手のひらサイズの缶の箱。シンプルなデザインで、中に薬が入ってるの」
聞こえてきたエレノアの声に、自身の手の中にある缶の箱が浮かぶ。
おそらくエレノアが探しているものは、これなのだろう。
「エレ…」
俺はエレノアの名前を呼びかけて、口を閉ざした。
もし、これが本当にエレノアのものだったら。
もし、あの錠剤が吸血鬼の本能を抑えるタブレットだったら。
もし、エレノアがその吸血鬼だったのなら。
彼女は遅かれ早かれ、その本能に苛まれることになる。
その時、彼女の側にいれば。
ーーーエレノアに、食べてもらえる。
俺は何度も禁断症状を発症した吸血鬼を見てきた。
彼らは血を欲する本能に抗えず、夢中になって、人を食らう。
もしエレノアが吸血鬼で、その求められる人が俺だったらどんなにいいだろう。
みんなの聖女が必死に俺を求めて、俺に牙を立てる。
首、腕、足、どこへだっていい。
そうして、頬を紅潮させ、夢中でその舌を這わせるのだ。
彼女になら、何を奪われても構わない。
俺の最期の瞬間が彼女であり、彼女の手で終われるなど、夢のような話だ。
例えそれが捕食目的でも、俺はいい。
そこまで思考を巡らせて、俺は何事もないように、缶の箱を騎士服の内ポケットへと入れた。