だからアナタに殺されたい。



「あの、これは…」



顔面蒼白で、目の前まで来た医師に弱々しく尋ねる。
すると、医師は一度難しそうな顔で視線を伏せた。それからゆっくりと視線を上げ、私を見た。



「…エレノアさん。落ち着いて聞いてください。まずここは帝国側に秘匿されている吸血鬼専門の施設です。それも禁断症状に関連するものの」



医師が私の様子を伺いながら、丁寧に始めた説明内容はこうだ。

吸血鬼にとって、タブレットさえ摂取していれば、陥ることのない、禁断症状。
だが、それでも極たまに、禁断症状を発症し、街で事件を起こす吸血鬼たちは確かにいる。
帝国の法律に則り、そういった吸血鬼たちはその危険性から処分…すなわち、殺される運命にある。
しかしそれはあまりにも残酷だと考えた吸血鬼たちは、禁断症状を発症した、または発症寸前の吸血鬼を保護し、なんとか回復させられないか、と考えたのだ。
そうして作られたのが、この施設だった。

私はどうやら禁断症状一歩手前まで来ていたらしい。
だが、そこまで説明されて、私はある疑問を抱いた。



「この施設のこと、私が置かれている状況のことはだいたいわかりました。ですが、わからないことがあります。何故、私は禁断症状になりかけていたのでしょうか?」



ここまで丁寧に言葉を紡ぎ続けてくれていた医師に、疑問の視線を投げかける。

禁断症状になってしまう原因は1日に1回、必要な血を摂取できなかったからだ。
しかし私は今日まで血を摂取できなかった日など1日もなかった。むしろローゼルから貰いすぎていたくらいだ。
それなのに、何故、私は禁断症状になりかけたのか。



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