だからアナタに殺されたい。



私の質問に、医師が眉間にシワを寄せる。
それからなるべく感情を声に乗せないように、淡々と続けた。



「エレノアさん…アナタは人間から直接血を摂取しましたね?それも愛する人の血を」

「…え」



医師の言葉に、脳裏にローゼルの姿が思い浮かぶ。

優しい眼差しでこちらをまっすぐと見つめるローゼルが、甘い声で私に囁く。
『俺を殺してもいいんですよ?』と。

その声があまりにも甘美で、私の理性を何度も何度もグラグラと揺らした。

私は確かに愛する人の血を喰らっていた。



「…」



沈黙は肯定と同じだ。
私の様子に医師は「やはりそうなのですね。ご両親からの報告とも一致している」と静かに納得していた。
そして私の疑問に答えるために、引き続きこちらの様子を伺いながら丁寧に説明を続けた。

私たち吸血鬼にとってタブレットが身近にある今、人間から直接血を摂取したいという考えの者はまずいない。
それはバケモノのようなおぞましい行為であり、そうしたいという感覚さえも理解し難いという認識だ。

だが、稀に人間から血を直接摂取してしまう者もいた。
そんな私のような吸血鬼はどうなってしまうのか。



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