『女神の加護を 受けし者は世界を救う』

②承:日常

真木野 理世(まきの りせ)。高校1年。
普通の家庭に生まれ、両親は共働き。
弟妹がいるけれど面倒を見ていたかというと、そうでもない。
得意科目はときかれても。成績はいたって普通。
運動神経が良いかと聞かれても困る。
だから魔法なのだろうか。

結界の施された学園。
それは何から守るため?
目視できるフィールドのような、想像可能な半円が学園を覆っている。
ここにきて数日。規則正しい生活。
設定のような説明が都度されて、私の意志など無視で物事が進む。
まるで夢物語のような感覚。
理解を超えた事が自然と記憶に留まり、非現実的な魔法が自分の手から生じる。
それは、この世界だから?
「リセ、次の授業に遅れるよ。」
優しい王子様のユーリス。
そして不機嫌な態度を隠そうともしない側近の騎士フリック。
「こんなところに居たのか、俺の目を掻い潜って迷子とか迷惑なんだよ。」
側近なのに、目を離したというか。
ユーリスと王城に呼ばれてたよね、確か。

授業を受ける。真剣に。
予言された魔王の復活が近いから。
この世界の崩壊を防ぐため。どれほどの人が犠牲になるかもわからない。
「どうしましたか、リセ。分からないことがあれば、そのままにしてはいけない。」
先生からの注意を受け、気を引き締める。
優秀な魔法士のレジェス先生。
魔力は身に着けるもので左右されるのだとか。
髪を伸ばし、サラサラと流れる一筋。紺色の髪。
色が濃いほどに魔力量も多いとか。だから黒髪は最上級に位置する。
私の期待される一因。
「先生、魔力が安定しません。」
多いからこその悩み。
それは良い事なのか、私にはわからない。
「手を両方。平を上に。」
出した私の両手に、先生は両手を上から重ね。
私の額に軽い口づけ。詠唱。
初めてされた時は焦ったけれど、それを何度か繰り返せば慣れてしまい。
それよりも魔力の流れに集中しなきゃと、毎回の眉間にシワ。
色気などない。
恋心?そんなものが芽生えない。
閉じた目。意識を集中して、光のような熱と眩さ。
自分の内から湧き出る魔力。
成功した。やっと先に進める。
それを目撃したクラスメイト。学園に広がるウワサ。


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