『女神の加護を 受けし者は世界を救う』
④結:冒険
勇者ジークハルト。魔法使いマリー。
王子のユーリス。騎士フリック。神官ライオネル。そして私。
聖女とは何か。
王城を出て、学園の前を通り。
王都の門前には大勢の民衆がいて。
声は聞こえるけれど、何を言っているのか分からない。
もうすぐ魔王が復活する。
その影響なのか魔獣や魔物が増え。
勇者ジークハルトは、学園にも通わず闘ってきた。
「俺には魔法の資質がなかった。父から教わったのは、この弓。生きながらえる知恵だよ。」
近距離で戦うには、防御系の魔法も必要。咄嗟の判断。
近距離の訓練を受ける意味。
フリックの傷は、それを物語る。顔や腕、見える部分に古傷。
私を命に代えても守ると言ったのは、常に死と隣り合わせで生きてきたから。
だからこそ。生きて欲しい。
「ジークハルト、あなたの正義感は。」
「そんなのないよ。勇者に選ばれた基準もわからない。君と同じだ。」
近しい存在。けれど。
「ジークハルト、ユーリス王子が呼んでいるよ。聖女様、少し私とも話をしていただけませんか?」
魔法使いマリー。私も話をしたかった。
これが何らかのゲームなら存在しない存在。
これが現実だからか、私にとって彼女は何なのか。仲間か……
「ふふ。あなたは召喚されたのよね?私は転移者。この世界がゲーム、レティッシラの聖女~女神の加護を受けし者は世界を救う~だと知っているわ。あなたは知らずに、そこにいるんでしょ?バカなの?」
タイトルだけは知っている。
女神の加護とは何だろうか。ここにいることがバカとは。
ゲーム攻略者のマリーは自信に満ち、空間に歪みを生じさせて手を入れた。
収納か何かの魔法だろうか。収納バッグの中に似ている。
取り出したのは手のひらサイズの星型アイテム。
「これが何かわかる?」
「まさか。」
「そう!これがあれば、世界は救われるの!」
私はマリーに抱きついた。
「良かった。救われる。この世界が。ありがとう。」
私では手に入らなかった物。
ハッピーエンドが保証された。
私にとって、それ以外の何物でもない。
「離れて!」
大きな声が耳元で。
私は感動しているのに。
マリーがこの態度なのは、ここがゲームの世界だから。
きっと私が進めなければならなかったシナリオを彼女がしてきたのだろう。