社長令嬢の私が恋したのは、清掃員でした
その頃――。
直樹は、
また別の都内ホテルにいた。
窓の外には、
夜景が広がっている。
だが、
カーテンは半分閉められ、
室内は、甘ったるい空気に満ちていた。
そばには、
シーツ一枚を身体に絡めたままの
若い女性がいた。
エリカ。
新人モデルとして売り出し中で、
その均整の取れたスタイルと、
目を引く美貌が、
今まさに話題になっている存在だ。
ベッドに身を預け、
白いシーツにくるまりながら、
エリカは静かに顔を向ける。
その視線は、
隣にいる直樹だけを映していた。
「……ねえ、直樹くん」
エリカが、
不満そうに唇を尖らせる。
「いつになったら、
お金、入ってくるの?」
直樹は、
ベッドに仰向けになったまま、
気だるそうに笑った。
「焦るなよ」
「もう少しだ」
エリカは、
彼の胸に指先を這わせながら、
じっと顔を覗き込む。
「ほんと?」
「ああ」
直樹は、
何でもないことのように続けた。
「三条の工場を、
いくつか切り売りする」
「売り先は、香港の会社だ」
言葉は軽い。
だが、内容は重かった。
「……うまくいけば」
「百億は、堅いな」
「きゃっ!」
女の声が、弾む。
「嬉しい!」
「じゃあ、もうすぐなのね」
期待に満ちた目。
直樹は、その反応を楽しむように、
口元を歪めた。
「まあな」
エリカは、そのまま、
身体を寄せてくる。
柔らかな感触。
熱を帯びた距離。
「……ねえ、もっと」
エリカは、
そのまま直樹の胸に身を寄せた。
シーツがずれ、
白い肌が、無防備に覗くのを、
彼女は気にも留めない。
少し熱を帯びた直樹の体に、
指を絡ませ、唇を寄せる。
「……ねえ……早く」
甘えた声。
それは、
欲しいものをねだる癖のついた
響きだった。
直樹の視線を確かめるように、
エリカは、
わざとらしく身体を摺り寄せる。
その仕草に、理性はない。
ただ、
求められることへの執着だけがあった。
「……もっと」
満たされる感覚を、
もう、自分から手放せなくなっている。
直樹が腕を回すと、エリカは、
安堵したように吐息を吐いた。
シーツが、乱雑に絡まり、
部屋の空気が、熱を帯びていく。
エリカは、
自分が何を差し出しているのか、
もう考えようともしなかった。
欲しいのは、
今、この瞬間の快楽だけ。
未来も、代償も、すべて、
後回しにしたまま。
乱れた吐息が、何度も漏れる。
「……いい、……くっ」
甘ったるい夜は、
際限なく、深みに沈んでいった。
その光景に――
迷いも、ためらいも、
一切ない、直樹は満足していた。
彼にとって、会社も、人も、
すべては――
欲を満たすための、
“道具”でしかない。
そう、
はっきりと伝わる夜だった。
直樹は、
また別の都内ホテルにいた。
窓の外には、
夜景が広がっている。
だが、
カーテンは半分閉められ、
室内は、甘ったるい空気に満ちていた。
そばには、
シーツ一枚を身体に絡めたままの
若い女性がいた。
エリカ。
新人モデルとして売り出し中で、
その均整の取れたスタイルと、
目を引く美貌が、
今まさに話題になっている存在だ。
ベッドに身を預け、
白いシーツにくるまりながら、
エリカは静かに顔を向ける。
その視線は、
隣にいる直樹だけを映していた。
「……ねえ、直樹くん」
エリカが、
不満そうに唇を尖らせる。
「いつになったら、
お金、入ってくるの?」
直樹は、
ベッドに仰向けになったまま、
気だるそうに笑った。
「焦るなよ」
「もう少しだ」
エリカは、
彼の胸に指先を這わせながら、
じっと顔を覗き込む。
「ほんと?」
「ああ」
直樹は、
何でもないことのように続けた。
「三条の工場を、
いくつか切り売りする」
「売り先は、香港の会社だ」
言葉は軽い。
だが、内容は重かった。
「……うまくいけば」
「百億は、堅いな」
「きゃっ!」
女の声が、弾む。
「嬉しい!」
「じゃあ、もうすぐなのね」
期待に満ちた目。
直樹は、その反応を楽しむように、
口元を歪めた。
「まあな」
エリカは、そのまま、
身体を寄せてくる。
柔らかな感触。
熱を帯びた距離。
「……ねえ、もっと」
エリカは、
そのまま直樹の胸に身を寄せた。
シーツがずれ、
白い肌が、無防備に覗くのを、
彼女は気にも留めない。
少し熱を帯びた直樹の体に、
指を絡ませ、唇を寄せる。
「……ねえ……早く」
甘えた声。
それは、
欲しいものをねだる癖のついた
響きだった。
直樹の視線を確かめるように、
エリカは、
わざとらしく身体を摺り寄せる。
その仕草に、理性はない。
ただ、
求められることへの執着だけがあった。
「……もっと」
満たされる感覚を、
もう、自分から手放せなくなっている。
直樹が腕を回すと、エリカは、
安堵したように吐息を吐いた。
シーツが、乱雑に絡まり、
部屋の空気が、熱を帯びていく。
エリカは、
自分が何を差し出しているのか、
もう考えようともしなかった。
欲しいのは、
今、この瞬間の快楽だけ。
未来も、代償も、すべて、
後回しにしたまま。
乱れた吐息が、何度も漏れる。
「……いい、……くっ」
甘ったるい夜は、
際限なく、深みに沈んでいった。
その光景に――
迷いも、ためらいも、
一切ない、直樹は満足していた。
彼にとって、会社も、人も、
すべては――
欲を満たすための、
“道具”でしかない。
そう、
はっきりと伝わる夜だった。