「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」
「それで、今度、富田が来るのか……。
だんだん落ち着かない店になってきたな」
河岸を変えるか、と滝本が言い出す。
「いや~、お目当ての新浜さんが店に出てこないんで、一回来たら、もう来ないと思いますよ」
と笑いながら、環奈は滝本が揚げている舞茸を見ていた。
「揚げ揚げ熱々の舞茸で冷酒をきゅーっとやりたいですね~」
とか。
「揚げ揚げ熱々の舞茸でキンキンに冷えたビールをきゅーっとやりたいですね~」
などと、何の気なしに言っていたら、滝本が揚げてくれることになったのだ。
滝本は完璧な状態で揚げようとしてか。
金色の油の中で踊っている、衣のついた舞茸を凝視している。
「お前、座って一杯やってていいぞ」
「えっ?」
「役に立たないから」
「……きっとなにかの役に立ちますよ」
「なんの?」
「えーと。
暑い課長をあおいで差し上げます、とか?」
「やめろ、油をあおいで火事にしそうだ」
そんな滝本の横顔を見ながら、環奈は思っていた。
訊くなら今かな、と。
「あの、課長」
「なんだ」