「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」
「うん。
美味いな、厚みのある果肉がジューシーで」
お土産のアップルパイは滝本も認める美味しさのようだった。
「バニラアイスとか添えても美味しいですよね」
「……買いに行くか」
いや、今からですか。
冷めるじゃないですか、と思いながら、赤ワインを呑みつつ、もぐもぐやっていると、滝本がこちらを見て言う。
「どんな食べ方してんだ。
顔中にパイがついてるぞ」
「あ~、さっき噛んだとき、パリパリの皮がパシッて弾けたんですよね~」
環奈は、ささっと顔を払い、
「とれました?」
と訊く。
「全然」
と言ったあと、滝本は俯いて笑い出す。
そして、ハッとしたように言った。
「どうしたことだ!
なんか、この感じ、付き合いたてのカップルみたいじゃないか!」
……ある意味、間違ってないですよね。
付き合いたてのカップル。
愛がないってだけで、と環奈は思っていた。