「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」
 


「うん。
 美味いな、厚みのある果肉がジューシーで」

 お土産のアップルパイは滝本も認める美味しさのようだった。

「バニラアイスとか添えても美味しいですよね」

「……買いに行くか」

 いや、今からですか。
 冷めるじゃないですか、と思いながら、赤ワインを呑みつつ、もぐもぐやっていると、滝本がこちらを見て言う。

「どんな食べ方してんだ。
 顔中にパイがついてるぞ」

「あ~、さっき噛んだとき、パリパリの皮がパシッて弾けたんですよね~」

 環奈は、ささっと顔を払い、
「とれました?」
と訊く。

「全然」
と言ったあと、滝本は俯いて笑い出す。

 そして、ハッとしたように言った。

「どうしたことだ!
 なんか、この感じ、付き合いたてのカップルみたいじゃないか!」

 ……ある意味、間違ってないですよね。

 付き合いたてのカップル。

 愛がないってだけで、と環奈は思っていた。

 


< 157 / 328 >

この作品をシェア

pagetop