「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」
 



「行くぞ、花守」

 今日は、滝本は環奈が出るのを待っていてくれた。

 置いていかれるときも、ままあるのだが。

 まあ、どの道、一緒に出社するわけにもいかないしな、と思いながら玄関に行く。

 ああ、この真新しい家の匂いも好きだ。

 出て行きたくない……。

 そんなことを考えていると、玄関ドアを開けて置いてくれた滝本がついでのように言う。

「昨日」

 はい? と環奈は滝本を見上げた。

「あいつらが店に行くのをわかってて行ったのは、ほんとは料理が食べたかったからじゃない」

 そこから、まだ続きがあるかと思ったらなかったので、

「……そうなんですか」
と環奈は言った。

「よし、行くぞ」
 滝本が目の前でドアを離したので、ドアが鼻先を掠めて閉まる。

 鼻を打ちそうになって、ひっ、と身をすくめたが、滝本はもう先を歩いて行ってしまっていた。

 いつもだったら、こんなときには、
「お前が鈍臭(どんくさ)いのが悪いんだろ」
と嫌味のひとつもかましてくるのに――。

 なんなんだ、と思いながら、環奈は鍵をかけ、後につづいた。
 




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