「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」
「……課長の家にも早くにご挨拶に行くべきでしたでしょうか」

「いや、いいんじゃないか?
 正月なら、親族もいる。

 一度に挨拶が済んでいいだろう」

 ……課長のご実家。
 なんかすごい家そうな気がするんだが、大丈夫だろうか。

 できるだけ普通の家がいいな、と環奈は想像してみる。

 学生時代に住んでたようなアパートの一室にみっしり滝本の親族が座っている。

 いや、座るところもない感じか。

 だが、滝本は容赦なく言ってくる。

「今年はうちかな?
 じいさんちかな?

 ホテルで年越すのなら、もう言ってきてると思うんだが」

 ……今の想像、絶対、違いそうだな。

 年末年始は高いのに、ホテルで年越し。
 絶対お金持ちだよな。

 それでも環奈はまだ、妄想の中で抵抗していた。

 みんなでビジネスホテルで年を越してみる。

 朝食はおせちではなく。
 玄関ホールにスタッフさんが出してくれた長机に並べられたお味噌汁とおむすび。

 あと、大皿にサラダとか、卵料理とか。

 ああいうのも、結構好きなんだけどな。

「まあ、どっちにしろ。
 正月からでいいらしいぞ。

 泊まりがけだとお前が緊張して疲れると思ってるんだろう」

 環奈は、ホッとした。

 そんな気を使ってくださるおうちなら、大丈夫かなと思ったのだ。
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