「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」
「新浜さんは、私だと緊張しないから一緒にいて苦じゃないと言ってるだけです。

 女性に見えていないのでは?」

 確かに、と失礼なことに滝本は同意する。

「聖一さんとは――

 今まで長い間許嫁だったのに、なにも話、進まなかったんで。

 あのままいても、やっぱり進展なかったと思います」

 そういう相性なんですよ、と環奈は聖一との関係をまとめる。

 どちらも、ぐいぐい前に出ていく性格ではないので。

 こんなことしなくても、どのみち、ふわっと聖一さんとの話は消えていたかもと思うようになっていた。

 実際、聖一の親族が彼に別の女性を強く勧めていたようだし。

「聖一さんはいい人過ぎて。
 一緒にいると、ちょっと緊張しちゃいますしね。

 なにかご無礼があったらと思うと――」

「つまり、俺にはご無礼があってもいいと?」

 いえ、と環奈は滝本ではなく、手元のモスコミュールを見ながら言った。

 その方が本音がしゃべれる気がしたからだ。

「もちろん、課長は上司ですから、緊張するんですけど。
 一緒にいると、楽しいですし。

 そうだ。
 松山もすごく楽しかったです」

「……そうか。
 それはよかった」

「課長との間に愛はないかもしれませんが。
 課長となら、上手くやっていけそうな気がします」

 どうせ、偽装結婚ですし――
と言おうとしたとき、滝本が言った。

「いや、あれよ」

 ――え?
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