「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」
「それで、美味しかったんですよ、そこのチキン。
今度行きませんか?」
仕事の途中でちょっとしたおやつタイムになっていた。
麻沙子が麻沙子の部署でもらったお土産のお裾分けを総務に持ってきてくれたからだ。
おのおのデスクで食べていたが、麻沙子が近くの椅子を引いてきて、環奈のところで自分の分を食べはじめたので、最近行った美味しいお店の話になったのだが――。
「ちょっと話巻き戻して」
と麻沙子が言う。
はあ、何処までですか?
と思いながら、環奈は言った。
「生きた鳥がたくさん入ったパイみたいなのとかあったらしいですよ」
「そこじゃないわよっ」
パイと言えば、これもパイ生地だなあ、と思いながら、環奈はお裾分けのお土産を食べていた。
あんこを何とも言えない風味のパイ生地で包んである洋和菓子だ。
――美味いっ!
「いや、グルメ番組の審査員みたいな顔で食べてないで」
と麻沙子は言ったが、前に座っている麻沙子の同期の平井弘章は、
「俺はその多国籍料理の店が気になるなあ」
と笑って言った。
麻沙子はキッとそちらを睨んで言う。
「お幸せな人は話に入ってこないでっ。
どうせ、悦子さんと行くのにいいなとか思ってるんでしょっ」
……私もお幸せになったら、話に入らせてもらえないのだろうか。
いや、なる予定は特にないのだが。
ないのだが――。