「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」
 


「それで、そこ、カフェも併設している素敵なベーカリーだったんですよ」

 環奈は隠れ家カフェでそんな話をしていた。

「知ってる、そこ。
 退職した頑固一徹みたいなおじさんがやってるとこだよね」
と今日は顔見知りの客ばかりだからか現れていた新浜が言う。

「退職した頑固一徹なおじさんが開く店は蕎麦屋じゃないんですか?」
と悦子が偏見を述べると、新浜は一瞬の間のあと、

「……パン屋もやるよ」
と言った。

 なんだろう。
 無理してお客さんの対応をしているように見える。

 人見知りを治そう強化月間なのだろうか?

「で、結局、また蜂に裏切られた話ができなかったんですよ~」
と環奈が笑って言うと、新浜はカウンター越しに真剣な顔で言ってくる。

「じゃあ、その蜂の巣に裏切られた話聞いたら、結婚してくれる?」

 ……蜂に裏切られた話ですよ。

 さすがの私も巣には裏切られないですよ、と環奈が思ったとき、西山が言った。

「じゃあ、俺が聞こう」

「いや、僕が聞くよ」

「ここは間をとって、わしが聞きましょうか?」
とテーブル席から笑って中谷が言い、奥様が、

「……やめてあげて」
と苦笑いしていた。

 ちなみに、滝本は今日は上司に呑みに誘われていて来ていない。
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