「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」
 



「お疲れ様です。
 前いいですか~?」

 昼休み、社食で滝本はそう声をかけられた。

 平井だった。

 ああ、と言うと、平井は前にトレーを置いて座る。

「いやあ、課長と向かい合って食べるとか緊張しますね」
と笑っている。

 緊張するのなら、座らなくてもいいのでは、と思ったのだが、実際のところ、そう緊張している風にも見えない。

「いや~、すみません。
 課長にこんな話するのもなんなんですが。

 課長、花守さんと仲いいんで」

 仲いいっていうか、まあ……

 一応、結婚を前提に同居したりしているわけだが――

と思ったあとで、ハッとする。

 結婚を前提に同居ってすごくないか!?

 普通に花守に付き合ってくれとか言っても、なかなかそこまでたどり着きそうにもないのに。

 でかした!
 花守をなんとも思っていなかった俺っ、と思ってしまう。

 今なら意識してしまって言えないことも、あの頃の自分ならガンガン言えた。

 もっと傍若無人に振る舞ってくれてもよかったんだぞ、あの頃の俺、と環奈に、

「……やめてください」
と青ざめられそうなことを思う。
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