「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」
 


「おかえりなさい」

 キッチンでそう言って滝本を迎えた環奈はちょっと照れた。

 なんだか奥さんみたいだな、と思ったからだ。

 だが、滝本の感想は違っていた。

「医者か」
「えっ?」

「手が手術中みたいになってる」
と環奈は言われた。

「コロッケ作ってたんですよ」
と環奈は答える。

 使い捨て手袋をはめて、コロッケを作っていた。

 それで、滝本を出迎えるために振り返ったとき、両手をなんとなく、上に上げてしまったのだ。

 周囲の物が汚れないようにだ。

「手伝おうか?」

「いいえ。
 大丈夫です。

 もう揚げるだけなんで。
 今日、雑誌見てたら、たまたまコロッケのレシピが載ってて」

 他にも美味しそうなのあったので、今度、作りますね~、
と言いながら、環奈は思っていた。

 ここで上手くできなかったら、

「もう作らなくていい」とか。

「今度から俺が作る」とか言いそうだな、と。
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