「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」
滝本が風呂から出ると、環奈はもう部屋に入ってしまったようで、リビングに人の気配はなかった。
環奈の部屋がある三階の廊下に行き、戸締りを確認しながら、窓の外を見て、ひとり呟く。
「天気予報じゃ、夜から雨って言ってたのに。
まったく降ってないな」
「確かに!」
といきなり環奈の声がした。
まだ起きていたのか?
右隣の環奈の部屋を見ながら、
「花守」
と呼びかけようとして、ハッとする。
ここは、環奈と呼ぶべきなのではっ?
新浜が環奈さんと言っているのは知っていたのだが。
この間、西山も普通に、
『おい、環奈』
と呼んでいて衝撃を受けた。
たまに(?)一緒に暮らしている俺だ。
名前で呼ぶことくらい許されるはずだっ!
まあ、あの二人は美味しい料理や美味しい酒を作ってくれるので、別枠な感じはするが――。
滝本はゴクリと唾を呑み、環奈の部屋の扉を見つめた。