「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」
 やってきた西山がターキーの皿を置きながら、
「むしろ、よくわかったな」
と言う。

「中の客が減ってきたら入れ」
と言って去っていった。

 マッチ売りの少女のように暖かい店内を見ながら、環奈はぼんやりと言う。

「……まあ、この寒さもきっといい思い出になりますよね。
 強烈に寒かった日の記憶って、何年経っても鮮明ですもんね」

「そうだな。
 孫子の代まで語り継げ」
と滝本が言った。

 はい、と言ったあとで、

 ……孫子の代か。

 誰と誰の子どもと孫なんだろうな、とちょっと思う。

「そういえば……」
と言って、滝本が咳払いした。

「クリスマスプレゼントを用意する時間がなかったから」

 嘘だった。

 悩んで決められなかったのだ。

 なかったのは、占い師のところに行って、相談する時間だった。

 だが、環奈はそんなこととは知らなかった。

「今度、二人で見に行こう」

 何処に、と滝本が言わなかったので、環奈は、
「あ、はい、ありがとうございます」
と普通に頷いた。

 滝本は指輪などを見に行こうという意味で行ったのだが――。

「すみません、課長。
 私もなにも用意してません。

 課長の欲しい物って、ほんと想像もつかなくて。

 ……でもあの」
と環奈は声を落とし、身を乗り出す。

 滝本も少し前に出てきた。

 環奈は周囲を窺い、言う。
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