「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」
 


 ひっ、課長に手を握られましたよっ。

 環奈は逃げたくなって、キョロキョロしてしまう。

 だが、二人きりの家なので、誰も助けてくれる人はいなかった。

 赤くなってしまっていることを知られたくないっ、と思う環奈に向かい、滝本は語りかけてくる。

「お前はカメじゃないから、手を振っても伝わらないだろう。
 だから、俺のつたない言葉で話す」

 ……何処からカメが出てきました?
と思っていたが、突っ込めない雰囲気だった。

「この間、ひとりで遅い時間に帰ったとき、ずっと思い出していたんだ。

 初めて、お前と二人で夜道を歩いたときのこと。

 ……俺はこれからもこの道を、ずっと二人で歩きたいなと思った。

 猫を探したり、王様なお前の話を聞いたりしながら」

 王様なんでしたっけ?
とまた思ったが、やはり、突っ込めない雰囲気だった。
< 305 / 328 >

この作品をシェア

pagetop