「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」

 

 聖一が帰ったあと、

「課長ナイスです」
と環奈は言って、なにが? と言われる。

「課長の卑屈なジョークのおかげで、しんみりしそうな場が和みました」

「俺は卑屈なことも、ジョークも言った覚えはないからなっ。
 ただの問いかけだっ」
と滝本が言ったとき、新しい客が入ってきた。

 人も少なくなってきていたので、外に出てきていた新浜が親しげに声をかける。

 黒いダウンコートにメガネに帽子。

 顔が小さいので、小洒落たニット帽を被っていると、顔が最早、ないのでは?
と言った感じだ。

 黒いコートも長身でガタイもいいので迫力がある。

 というか、なんかオーラがある。

 ……この人、何処かで見たことが、と環奈が眺めていると、
「浩司、とっといたから、料理。
 ちょっと冷めたかもだけど」
と新浜が言う。

「悪いねー。
 ここのおせち、食べてみたくてさ」

「おせちじゃないけどさ。
 まあ、それっぽい感じ」

 新浜さんが懐いてるとは……と思ったとき、男が帽子とメガネを外した。

「ああ……」
「あー」

 環奈と中谷は思わず声を上げたが、二人はそれ以上、なにも言わなかった。

 空気を読む常連だ。
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