「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」
「いいタイミングで来たね。
 五分早かったら、襲われてたよ」
とそのイケメンに向かい、爽やかに笑って新浜が言う。

「……いや、襲わないですよ、悦子さんたちだって」
と環奈は一応、先輩たちを庇った。

 舞台俳優の綿貫浩司(わたぬき こうじ)だ。

 滝本が、
「誰だ?」
と小声で訊いてくる。

 芸能人であることは、さすがに察したらしい。

「……ほら、洗剤のCMの」

「CMはあんまり見ない」

 いや、テレビ自体、あんまり見ないですよね、と思ったとき、浩司が笑って言った。

「どうも、綿貫です」
と隣にいた滝本に手を差し出す。

「あ、どうも……」

 握手する二人を見て、環奈が叫ぶ。

「あっ、課長っ。
 私なんて、舞台も観に行ってるのにっ。

 CMも見ていない課長が何故っ」

「音くらいはたぶん聞いてる」

「……あのCM、僕、ほとんど喋ってないんですけどね」
と浩司は笑っていた。

 芸能人ってとっつきにくいと思っていたのだが、そうでもないようだ。


 
< 316 / 328 >

この作品をシェア

pagetop