「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」
「実家にいた頃、家に蜂が入ったんです。
 私はその蜂を退治せずに見守っていました」

「なんでだ」
「家族に文句言われなかったのか」
と口々にツッコミが入る。

「いずれ出ていくだろうと思ってたんですよ。
 あ、出そうだな、と思うと、窓を開けてやったりしてたんですが。

 なんか、出ていかなかったんですよね~」

 西山が、
「家の中の方が適温だったんじゃないか」
と言う。

「で、そんなある日、フローリングの上を裸足で歩いていたら、足の裏に激痛が走って。

 やられたっ!
と思いました。

 床に蜂がいて、私はそれを踏んでしまったのです」

「いや、やられてんの、蜂の方じゃねえか」
と西山が言い、

「まあ、床に落ちてた時点でもう死にかけてたよね」
と新浜が言う。

「死に際の最後の一刺しを、朝に晩に外に出られるよう、見守ってきた私に喰らわせたんですよ」

 滝本が、
「上向きに死んでたところをお前が踏んだんじゃないのか」
と言ってきた。

「いや、生きてたんですよ。
 ぶぶぶぶって動いてました。

 おのれっ、この蜂には人の心がないっ、と思いまして」

 そりゃ、ないだろうよ、という顔を全員がした。
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