婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする

5.恋心と思い出と

正午前、身支度を調えて琉生さんと一緒に家を出た。

彼の愛車で区役所に向かう途中、婚姻届を今日提出して構わないのか、琉生さんにもう一度確認された。


「蕗が迷うなら日を改めよう」


赤信号で停止したとき、私に向き直った彼が提案する。


「私の心は決まっているので……琉生さんこそ本当にいいの?」


「もちろん。俺は蕗と夫婦になりたい」


ためらいのない発言に心が跳ね、安堵が広がる。

きつく握りしめていた手から力が抜けていく。


……大丈夫、きっとうまくやっていける。


私にだって過去、交際していた人がいるのだし、瑛斗から聞いた話はもう忘れよう。


「ありがとう。私も」


琉生さんの綺麗な目を見つめながら伝えたところ、柔らかな微笑みを向けられ、なぜか頬が熱くなった。


「――おめでとうございます。お幸せに」


区役所の職員が手続き終了後に、温かく祝福してくれた。


「ありがとうございます」


琉生さんが嬉しそうに返答する。

遅れて礼を口にした私の手を琉生さんがそっと繋いだ。

伝わる温もりに胸がくすぐったくて、引いたはずの頬の熱がぶり返していた。
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