婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
こんなに優しくしてくれるのは、責任感、それとも元来の真面目な性格のせい?


かけられた言葉が嬉しいのに、今は素直に受け取れない。

そしてそんな自分の変化が理解できない。

結婚を決意した頃ならきっと率直に迷いや疑問を尋ねていたはずなのに。


「……ありがとう、なにもないし、平気だから。少し緊張しているのかも」


心配の色を濃くした彼の目を避けるように早口で答える。


「それならいいけど、不安があるならいつでも話してほしい」


「はい。あの、じゃあ私、先に休ませてもらいます」


「おやすみ」


優しく口にする彼に就寝の挨拶を返し、自室に急いで戻る。

ゆっくりベッドに横になって天井を見上げる。
 
琉生さんは誠実に接してくれている。

これほど素敵な人なのだから過去に恋人を含め想う相手がいるのは当然だ。

なによりも私が耳を傾け、向き合い、信じるべきは琉生さんで瑛斗じゃない。

琉生さんが自ら口にしない事柄まで、詮索すべきじゃない。

そう何度も自身に半ば強引に言い聞かせ、瞼を強く閉じた。




< 99 / 185 >

この作品をシェア

pagetop