婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「あり、がとうございます」


ぎこちなく礼を伝える。

記念に食事に行こうか、と誘われてうなずく。

車が走り出した後も、しばらく胸の動悸は収まらなかった。

琉生さんは都内にある最近評判のイタリアンレストランを予約してくれていた。

そこは以前、私が雑誌の特集で読んで一度行ってみたいと何気なく彼に話していた場所だった。

さらにお祝いだからと真っ白なトルコキキョウとガーベラの可愛らしいブーケと記念の豪華にデコレーションされたおいしそうなケーキを贈ってくれた。

思いがけない贈りものの連続に驚く一方で、なにも準備できていない自分の至らなさが嫌になる。

反省し、今後はきちんと準備しようと強く決意する。


「……ごめんなさい。こんなに素敵な贈りものをたくさん用意してくれたのに私はなにもできていなくて……」


贈られた優しい香りを放つブーケを胸に抱えたまま、謝る。

素晴らしい気遣いをしてくれた彼に申し訳なさがこみ上げる。


「謝らなくていい。俺がしたくてしているだけだから」


「あの、なにか私にしてほしいことやほしいものはない? こんなに素敵な贈りものはできないかもしれないけれど……せめてお礼をさせてください」


「俺は一緒に祝えただけで嬉しいし、気にしなくていい」


「でも」


必死に言い募る私に一瞬困ったように眉尻を下げた彼が、ゆったりとテーブルに頬杖をついて私を見つめ返す。
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