婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「……じゃあ、俺のわがままをひとつ聞いてもらっていい?」


低く、それでいてどこか甘さを纏った声が耳に響く。

妖艶な眼差しから目をそらせない。

唐突に変わった雰囲気に鼓動が速いリズムを刻み出す。

琉生さんがもう一方の腕を伸ばし、指先で私の頬にかかる髪をつまんでそっと耳にかけ直す。

骨ばった指が微かに頬に触れる感触に肩が跳ねた。

以前と同じ動作だけど、こんな甘い雰囲気のものではなかった。


「結婚指輪を一緒に選ぼう」


いい?と口角を上げて尋ねる仕草から目を離せないまま、首を縦に振る。

とんでもない願いではなくホッとしながら、離れていく指にわずかなさみしさを感じてしまう。

そして、そんな自分にうろたえる。


「ありがとう」


「あの、ほかにはないの? 結婚指輪は全然わがままじゃないし……」


「じゃあ、もうひとつ。婚姻届も提出したし、もう少し夫婦として距離感を縮めたい。一緒に出かけたり、ふたりの時間を多くとりたい……俺に蕗をもっと教えて」


真っ直ぐな物言いにもう一度小さくうなずく。

琉生さんの願いに他意はないはずなのに、頬に熱が集まる。

自分の反応をうまくコントロールできなくて戸惑う。
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