婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「いい機会だからほかの買い物も済ませよう。蕗、引っ越しで色々処分したけど足りないものがあるって言ってただろ」


「ええと、でも、それはまた今度で……」
 

自覚したばかりの想いを落ち着けたいから、少し離れたいのに。

このままではきっと上手く隠せなくて聡い琉生さんに感づかれてしまう。


「ふたりの時間を多くとろうって言っただろ? 俺に贈らせて。指輪のお礼に」


「お礼って、それはお互い必要なものでしょう。私はいつもたくさんいただいているから」
 

慌てて言い返すけれど、自宅で心地よく過ごしてほしいからなどと言い含められてしまった。
 
結局近くの大型ショッピングセンターにふたりで向かい、日用品などを一緒に見て回った。

私の希望や好みを理解し、さりげなく優先してくれる姿に胸が甘く疼く。

ふとした拍子に向けられる優しい視線や名前を呼ぶ穏やかな声に、小さな〝好き〟は際限なく降り積もっていく。


「付き合わせてしまってごめんなさい。しかも全部買ってもらって……」


「蕗のものを選ぶのは楽しい。だから、ごめんよりありがとうが嬉しい」
 

そう言って、私の荷物をすべてさりげなく持ってくれる。
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