婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「蕗の嘘のつけない正直な性格も、仕事に真面目に取り組む姿勢も思いやり深くて家族思いなところもすべてが愛しい。どんなときも前向きで困難から逃げない強さに俺は幾度も救われた。蕗を知るたびにどんどん惹かれていく」
 

ほんの少し体を離した琉生さんが、私の涙を長い指で拭いながら告げる。

嬉しいけれど恥ずかしくて彼を直視できない。


「それに、なにより可愛い」
 

コツンと私の額に額を合わせた彼の低い声に胸が甘く締めつけられた。

彼の告白や真っ直ぐな感情を疑うつもりはないけれど、どうしても今、尋ねたい事柄があった。
 
どう切り出せばいいか迷っていたところ、彼に問われた。


「蕗が俺と同じ気持ちでいてくれたのなら、なんでさっきは泣きそうになっていたんだ?」


「実は……この間瑛斗から連絡があって、琉生さんに想う人がいるって聞いて」
 

額を外して私の顔を怪訝そうに覗き込む彼に、従弟との会話内容を説明する。
 

琉生さんは私の話を最初こそ驚いたように聞いていたけれど、段々なにかを迷うような、それでいて苦しんでいるような表情を浮かべた。


「想う人がいるのを責めるつもりじゃなくて、ただ……なんていうか、つらくて」
 

結果的には瑛斗の話のおかげで自分の恋心にはっきり気づくようになったわけだから、皮肉ながらも必要な事柄だったともいえる。

第一、結婚を決めるまでの出来事について私に口を出す権利はない。

わかっているけれど、想いを整理できず苦しかった。
 
その旨もたどたどしくも説明しながら付け加える。
< 116 / 185 >

この作品をシェア

pagetop