婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「――苦しい想いをさせて悪かった。俺がもっと早く正直に全部打ち明けるべきだった。続さんが話した内容は概ね事実だ」
 

眉根を寄せたまま、琉生さんが謝罪とともに肯定する。


「え……?」


「三年前、俺は千里川土手である女性に出会った。彼女は将来に迷って決断できず、自信を失っていた俺の話を聞いて、率直な感想を伝えてくれた。彼女と話しているうちになぜパイロットを目指したのか、どれだけこの仕事に就きたかったのかを改めて思い出した」
 

正直に教えてくれるのは嬉しいが、彼の大事な女性の話だと思うと胸が塞ぐ。

聞きたい気持ちと耳を塞ぎたい思いがせめぎ合う。


「当時、彼女は父親を失って苦しんでいた。そんなつらい状況でも彼女は見ず知らずの俺の話に耳を傾けて、俺の夢を後押ししてくれた。いつか再会して礼を伝えたいとずっと願っていた。彼女は俺の大切な恩人だから」


「……今も、捜しているの?」
 

恩人について語る琉生さんの柔らかで切なげな眼差しがつらくて、下を向く。


「もう捜していない。今は、俺の腕の中にいてくれるから」
 

耳に届いた返事に驚いて、目を見張る。


「俺がずっと会いたいと願っていたのは、蕗だ。幼い頃と三年前もContrailでも、俺を救ってくれてありがとう。ずっと直接礼を伝えたかった。蕗が俺の恩人で唯一の想い人だよ」
 

そう言って、彼が大きな両手で私の頬を包みゆっくり顔を持ち上げた。

衝撃的な事実に、至近距離に迫る整った面差しをただ見つめるしかできない。
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