婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「信じるかどうかは江口さんの自由だけど、俺は江口さんを決して選ばないと伝えた」
 

淡々と口にする琉生さんを見上げながら、江口さんの強ばった表情を思い出す。

恋心を抱く人から想いを返してもらえない苦しみを今の私はよく知っている。

自分が選ばれたとか、優位に立つつもりは毛頭ないが、胸が痛む。
 
駐車場に到着して車に乗り込む。

車を発進させた琉生さんの横顔を暗い車内でそっと盗み見た。
 
私たちは幼い頃から何度も偶然に再会し、その度に思い出を重ね、恋を知らないままずっと惹かれてきた。


「見過ぎ」
 

私の視線に気づいていたらしい琉生さんが正面を見つめながら、小声でつぶやく。


「ご、ごめんなさい」


「謝らなくていい。運転中で俺は蕗を見れないし、抱きしめられないから悔しいだけだ」


直接的な表現に、さらに体温が上がった気がした。


「帰ったら、思い切り抱きしめたい。ずっと触れたかった」


「う、うん」


「……そんなに簡単に許可していいのか?」
 

正面を見据えながら尋ねる彼の表情は暗がりでよくわからない。


「私も、琉生さんに触れたいから」
 

赤裸々な想いを伝えてくれた彼にならうように本心を素直に告げる。

先ほどは思わず外だというのにキスもしてしまったし、今もとても恥ずかしいけれど、想いや考えはきちんと口にしなければ相手に伝わらない。
 
この人が大切だから、ちゃんと本音を誤魔化さずに届けたい。
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