婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「……俺が、その先を望んでいても?」


投げかけられた問いかけに鼓動がひとつ大きな音を立てた。

この年齢だし意味がわからないわけじゃないし、はぐらかすつもりはない。


「俺の答えはもう出ている。蕗が選んでほしい」


低い真摯な声が耳に響く。


「私も、望んでいる……」
 

若干声が震えそうになったけれど、はっきりと答える。


「ありがとう、大切にするから。これから先、ずっと」
 

そう言ったきり、自宅に到着するまでお互い無言だった。

玄関ドアを開けた彼に促され、先に靴を脱いで室内に足を踏み入れる。

琉生さんは廊下に買った荷物を置いてドアを施錠し、靴を脱ぐ。
 
廊下に足を一歩踏み出した彼が私に手を伸ばし、抱きしめて軽くキスをした。

柔らかな口づけと抱擁をほどいた琉生さんは私の目を覗き込む。

少し前と同じように私の指と自分の指を絡めて歩き出す。
 
リビングを抜けて、真っすぐ向かった先は彼の寝室だった。

掃除以外で入る機会のない場所に緊張する。
 
琉生さんはベッドサイドのライトをつけ、私と並んでベッドの端に腰を下ろす。

黒と白で統一された部屋にはベッド以外の家具はない。
 
そっと絡めた指先にキスを落とした後、琉生さんは私の頬に片手で触れた。

初めて見る色香の滲んだ眼差しに鼓動が早鐘を刻む。
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