婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
私の毛先をいたずらに弄びながら、琉生さんが名残惜しそうにつぶやく。


「もっとふたりきりの時間を過ごしたいけれど、そろそろお互いに仕事の時間だな」
 

そう言われ、慌てて寝室の時計を確認する。

まだ出勤準備を始める時間には余裕があって胸を撫で下ろす。

今日は偶然、ふたりとも早朝からの出勤でなくてよかった。


「今日出勤して、うまくタイミングが合えば上司に直接婚姻届を提出した件を伝えようと思う」
 

琉生さんは近々結婚予定だとすでに上司に報告をしていたそうだ。


「わかった。じゃあ私も報告しておくね」


なにも話していなかったからきっと驚かれるだろう。

とはいえ、私よりも琉生さんのほうが反響が大きい気がする。


「それと、退勤してから瑛斗へ結婚連絡をするつもり」


「俺は今日からミラノへ向かうから戻るのは四日後になる。電話、ひとりで平気か? 以前のように押しかけられるかもしれないし、心配だ」


「大丈夫。瑛斗は今の私の住所を知らないし、電話するだけだから」
 

私を案じてくれる彼を安心させるようにきっぱり言い切る。
 

メッセージで簡潔に結婚報告をしてもいいが、遺言の件もある。

条件を満たした今、Contrailを私が相続し、改めて相続手続きを進める旨をはっきり伝えておきたい。

瑛斗に伝えれば、ひかりさんの耳に入るのはきっと時間の問題だ。

さらに祖母が生前懇意にしていた遺言執行人である弁護士にも連絡し、できるだけ早く手続きを進め、終わらせたい。
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