婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
勤務時間が終了し、同僚たちの質問攻めから解放され、自宅に戻った瞬間、小さく息を吐いた。

手早く夕食や入浴などを済ませ、意を決して従弟に電話をかけた。


『珍しいな、蕗から電話をかけてくるなんて。やっと俺の話を信じる気になったのか?』


従弟の見当違いの発言をきっぱり否定する。


「違う、琉生さんと私の結婚を伝えるためよ」


『なんだって!?』
 

大きな声がスマートフォン越しに耳に響く。


『俺の忠告を忘れたのか? あの男には想う相手がいるんだぞ!』


「覚えてる。そもそも全部瑛斗の誤解だから」
 

早口で責めてくる従弟に、努めて冷静に事情を説明する。


「――そういうわけで、琉生さんが捜していたのは私だったの。婚姻届も提出したし、今後Contrailは私が相続するつもりで……」


『だからって、お前が騙されていないってなんでわかる?』
 

鋭い声で言葉が突如遮られた。

急に変わった従弟の変化を訝しむ。


『あの男が幼い頃と三年前に出会った相手で、お前が恩人だったのは理解した。だがあいつはずいぶん前からその事実に気づいていたんだろ。なぜそれを今になって告白する?』


「それは私が尋ねたから……」


『そうだ、蕗が聞いたから隠し通すのは都合が悪いと思って答えたんだろ。自分から言い出すつもりはなかったんだ。大方、お前が本当に自分の思い出と同じ理想どおりの女か、じっくり見極めていたんじゃないのか?』
 

失礼すぎる物言いに腹立たしくなるが、ここで感情的に言い返せば瑛斗にうまく丸め込まれる可能性もある。

そう思って、必死にこらえた。

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