婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「――確かにねえ。まず会社が違うし、客室乗務員の方々以上に接点の少ない私たちにでさえ、向さんって結婚されたんですよねってカウンターでよく聞かれるし」


「そうなんだ……」


仕事が終わって、たまたま帰りが一緒になった未歩と最寄り駅までの道を歩く。


「結婚自体は隠していなくても、広まるのが早いというか……さすが向さんの人気というべきか」
 

夏休み期間は、羽田空港はほかの空港同様大勢の人で混雑する。

迷子や予想もしないトラブルも多発するため気が抜けない。

今はお盆も過ぎ、比較的まだ落ち着きを取り戻し始めていた。


「今は普段よりお客様も多いから余計、噂話が耳に入りやすいのかもしれないけどね。機内で隣の席の人が話しているの、聞こえたりするでしょ」
 

そう言って、親友は肩をすくめる。
 
少し前に改めて、未歩に彼を紹介した。

三人のシフトを合わせるのはなかなか困難で私たちは勤務前、彼は勤務後のほんの少しの時間だったが、琉生さんは私の親友に会えて安心していた。


「向さんは直接的に聞かれているかもね」


「うん、祝福を伝えてくださる方が多いって。ただほんの一部、私について興味津々で尋ねてくる人もいるって言ってた」


「奥さんはどんな人ですか、同じ会社の人ですかとか?」
 

未歩の質問にうなずく。

私の名前はもちろん伏せてあるがやはり気になるのだろう。


「まあ、人の噂も七十五日って言うし。あまり神経質になりすぎないようにね」
 

明るく告げた未歩に手を振って、ホームで別れた。
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