婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
注意しようかと考えたが、友人を撮影していただけと言われる可能性があるし、画像が残っていなければ証拠にはならない。

とはいえ、このまま見て見ぬ振りは絶対にできないため、急いで向さんに重なる位置に立つ。


「お水はいかがですか?」


女性たちに話しかけたところ、明らかに不機嫌そうな表情を浮かべる。

さらに彼女たちはサッとスマートフォンを隠した。

女性たちに水を注いだ後、その場で振り返って、向さんに水のおかわりを尋ねた。

彼女たちの邪魔になる場所から動かずに給仕しようとしたせいか、体のバランスが少し崩れ、彼のグラスを持った手が滑ってしまった。

グラスが傾いて中の水がこぼれ出す。

それほど中身が残っていなかったのが幸いだったが彼がカウンター上に置いていたスマートフォンに少しかかってしまった。


「も、申し訳ございません……! すぐに拭くものを」


「いや、大丈夫。君は……従業員? 今日はいつもの男性はお休み?」


慌てる私に向さんが尋ねる。


「はい、お休みです。私は、ここにはよく来ているのですが……お会いするのは初めてです……あの、スマートフォンを」


焦りのせいもあり、支離滅裂な返答になってしまう。
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