婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
自分の勤務先を伝えて彼の名前を呼べばさらに警戒される気がして、必死に頭を働かせる。

急いでタオルを渡して彼に自身のスマートフォンを拭いてもらい、私はカウンター周辺を拭く。

撮影しようとしていた女性たちが、一連の私の態度になにか勘が働いたのか、急いで退店しようとする。

その様子を視界の端に捉えて、慌てて母の姿を捜す。

彼女たちの端末内部に彼の写真が残っている可能性がある。

確認して今後同じような行為をしないよう伝え、写真を消してもらわなければ。

彼女たちの行為の、明確な証拠がない状態でどう動けばいいのかを必死で考える。

すると、ほかの客の会計を終え、状況に気づいた母が向さんに謝罪にやってきた。


「申し訳ございません。すぐにお飲み物を取り替えて、新しいタオルをお渡しします。お召し物は濡れていませんか?」


「平気です。気になさらないでください」


母の問いかけに向さんが返事をする。


「あの、お会計待ちの女性のお客様が……!」


カフェの出入り口へと移動した女性たちの行為を伝えるべく、焦りながら口を開きかけた私を母が首を横に振って止めた。

そして私に向かって小さくうなずき、小声で「確認して注意してくる」と耳打ちした。
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