婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「だ、大丈夫ですか? ……あの、いったいなにが」


「オーナーが注意した女性たちが、私たちが店から出た途端、スマートフォンをあなたに向かって掲げたので、念のため確認してきました」


どうやらふたりの女性は向さんの写真撮影を邪魔した挙げ句、母に注意されたことにイラ立ち、私に怒りの矛先を向けようとしていたらしい。

向さんは自身のファンだという女性たちをやんわり諭しつつ、くれぐれも店や母、私を困らせないようきっちり注意してくれたそうだ。

母のときとは違い、憧れの人からの言葉を素直に受け止めた女性たちは二度とこんな真似はしないと約束し去ったという。

ちなみに写真も撮っていないとフォルダを見せてくれたらしい。


「……申し訳ございません、助けていただいてありがとうございます」


「いいえ、元はと言えば私が原因なので」


頭を下げた私に、顔を上げるよう彼が促す。


「では失礼します」


「は、はい、あの、本当にありがとうございました」


立ち去る彼の後ろ姿を見送りつつ、自分の失態の数々に落ち込む。

彼はお客様なのに水はかけるわ、逆恨みされかけたところを助けてもらうわ、迷惑ばかりかけている。

口や態度に出さなくとも、度重なる出来事に不愉快な思いをしているに違いない。
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