婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
大阪国際空港南端に接する千里川土手は、飛んでいく飛行機を驚くほど間近で見れる有名な場所だと大阪出身の父に聞いていた。

私の飛行機に関する知識のほとんどは父に教えてもらったものだ。

父と生前、いつか一緒に見に行こうと約束していたけれど叶わなかった。


三年前、父の葬儀を終えて、最愛の伴侶を失い悲しむ母の代わりに父方の親戚の呼び出しに応じ、大阪を訪れた帰りに立ち寄った。

眼前に迫り来る巨大な機体と大きな音に圧倒され、足がすくみそうになると同時に視線を外せなくなる。

飛行機を愛していた父も幼い頃、こうして眺めていたのだろうかと、さみしさにも似た悲しみが胸を占拠する。


まさかそこで心に焼きつく出会いがあるとは予想もしていなかった。

るうくんのように感謝を伝えたいというものではなく、心の奥底に深く根付いて離れない指標のような思い出。

恐らくもう二度と会うことはない、男性の横顔をぼんやりと思い出す。

なぜか最近失態を犯したばかりの人にわずかに似ている気がして、慌てて首を横に振った。


「昨日散々話し合って決めたでしょ。大丈夫、勢いで結婚したりはしないから。職場の人に迷惑はかけられないし、私に彼氏がいないって菫は知ってるでしょ」


できるだけ明るい声で告げるが、妹の表情は沈んだままだ。
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