婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「でもこれじゃ、店や家族のためにお姉ちゃんが犠牲になるみたいじゃない」


「犠牲じゃないって。想い合える人に出会って結婚できたら幸せでしょ。私にだって結婚願望はあるんだし、時期が遅いか早いかなだけ。あ、もうこんな時間、そろそろ行かなきゃ。じゃあね、また連絡するから」


腕時計に視線を落とし、まだ納得できていない様子の妹に早口で告げて、搭乗口に向かうため歩き出す。

妹の心配は嬉しいけれど、ほかに最適な方法が見つからない。

犠牲になっているわけじゃないし、納得しているのだからと自分に言い聞かせる。

保安検査場を抜けて、搭乗口へと向かう。

目の前の大きなガラス越しに飛び立つ飛行機が目に映る。


再び脳裏に三年前の千里川土手での思い出がよみがえった。


『――もう十分、がんばっているでしょう』


記憶に残る、優しい低い声に胸が切なく疼いて足を止めた。


あの日、頭上の飛行機に気を取られて、私は足元がおろそかになっていた。

さらに土手の辺りはあまり足場がよくなく、つまづいて転びかけたところを、ひとりの男性がとっさに支えて助けてくれた。
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