婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
『……どこか痛めましたか?』


親切な男性に心配そうに問われて、自分がずっと険しい表情で空を見上げていたと気づく。

この日は朝から寝不足のせいかコンタクトが上手く入らず、眼鏡をかけていた。

下がった眼鏡のブリッジを押し上げ、ずれたマスクを戻す。


『え……あ、いいえ、すみません。違います。ちょっと、私、飛行機が苦手で、でも大切で』


要領を得ない私の返答に、彼はかぶっていた帽子のつばを少し持ち上げて、怪訝そうに首を傾げた。

完璧なアーモンド型を描く二重の綺麗な目に、視線が釘づけになる。

口元が黒のマスクで覆われているせいか、顔の小ささが際立っていた。

私と同い年くらいだろうか。


『飛行機が嫌いなのではなくて、その、乗るときに緊張するんです。でもここはずっと訪れたい場所だったので……』


男性の訝しげな視線に、慌てて説明する。

一方で見ず知らずの人になにを焦って言い訳しているのだろうと冷静に考える。


『そうですか……よかったです。どこもケガをされていなくて』


私の脈絡のない話をないがしろにせず、具合が悪いのかと思いましたと付け足す優しさが、弱った胸にじわりと染みた。
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