婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
そのとき大きな機体が私たちの真上を大きな音とともに飛んで行った。

肩をすくめる私とは対照的に、傍らの男性はキラキラと目を少年のように輝かせて飛行機を見つめていた。


『……ああ、やっぱりカッコいいな』


混乱していると口にしていた男性だが、眼差しは生前の父が飛行機へ向けていたものによく似ていて、深い愛情と興味が滲み出ていた。

偶然居合わせた見知らぬ者同士の気安さと、父に似た空を愛する眼差しと弱り切っていた心のせいか、今度は私がポツリポツリと自分の感情をこぼしていた。

父を失って素直に悲しめない葛藤、背負うものの大きさ、支えきれない不安があふれ出していた。

男性は深く追及したり核心を突くような物言いをするでもなく、ただ黙って耳を傾けていた。

そしてまるで私の気分を晴らすかのように機体の説明や空港について教えてくれた。

ここ大阪国際空港は運用時間が定められているが悪天候などの例外時は運用時間外でも離発着が認められる場合があるそうだ。

ただし、どんなときでもというわけではなく細かい要件が存在するらしい。

彼が語る内容によって変化する表情や口調に引き込まれ、気がつけばずいぶん長い時間が経っていた。

きっと父と訪れていたらこんな時間を過ごしたのだろうと、父との約束が果たせた気がした。

同時に消化できずにいた父との思い出、悲しみや鬱積した思いが少し整理できた気がしていた。

ずっと私は自分の気持ちを吐き出したかったのかもしれない。
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