婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
機体は終始大きく揺れもせず快適なはずなのに、服用した酔い止めも効かないまま羽田空港に到着した。

そんな状態なのに、いつもより着陸に動揺しなかったのはすでに余裕がなかったからだろうか。

荷物収納棚からそれぞれバッグを取り出す人やシートベルトを慌ただしく外す乗客を眺めながらゆっくりと腰を上げた。

軽い目眩にギュッと目を閉じて耐える。


「御気分が優れませんか?」


優しく声をかけられて目を開ければ、すらりとした長身の大きな目の客室乗務員が私を心配そうに見つめていた。


「あ、いいえ、すみません……大丈夫です」


「顔色が悪いようですので、医務室にご案内をいたしましょうか」


「平気、です。あの、少し酔ってしまったみたいなので」


客室乗務員の親切に小さく首を横に振る。


「よくあることなので本当に大丈夫です、ありがとうございます」


早口で伝えて荷物を持ち、すっかり人も少なくなった機内から急いで降りる。

搭乗橋を歩く足が重い。

通路の先に従弟の姿が見えて、気分がさらに沈む。

機内でもずっと考えていたが、どうしてあんな提案をするのか理解できないし、承諾もしたくない。

距離が近づくにつれて話したくない気持ちが募り、足早に横を通り過ぎた。
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