婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「蕗! 待てよ、なんだその態度は」


不機嫌そうに言って追いかけてくる。

逃げたけれど空港内の土産売り場の端でやはり捕まって、足止めされた。


「もう一度言う。俺たちは結婚するんだ」


いつの間にか決定事項になっていて驚いた瞬間、腕を引き寄せられ、抱きしめられそうになり必死に抵抗する。


「その話は断わったでしょ、離して」


「お前が了承すれば離す。とりあえず今日は俺のところに来い」


なぜかまったく聞く耳を持たない。

延々と再び利点を告げられ、さらに強く引き寄せようとする。

職場でこんな醜態をさらしたくないのに、気分の悪さのせいか力が上手く入らない。


「行かない、離して……!」


何度も伝え、拒否しているのに従弟はあきらめない。

すでに乗客たちは出口に向かっているうえ、この場所は目立ちにくい。

力が強く強引に引っ張られそうになったとき、背後から男性の声が響いた。


「失礼ですがお客様、どうかされましたか?」


話しかけられて瑛斗の腕の力が緩まり、その隙に急いで離れ、距離を取る。

気分はますます悪くなり深呼吸を繰り返す。


「ああ、いえ、連れの気分が悪そうなので連れて帰ろうとしていたんですが嫌がるので……大丈夫ですからお構いなく」


人好きのする笑みを浮かべて取り繕い、再び私を囲おうとする瑛斗から逃れたくて、男性に顔と体を向ける。

その瞬間、副操縦士の制服と整いすぎた面差しが視界に映り、目を見開く。
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