婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「向、さん……?」


名前を呼んだ途端、向さんは一瞬目を見開き、グッと口元を引き締めた。

もう一度謝罪と礼を伝えたかった人にやっと会えたのに、散々な状況を見せている現状に落ち込む。

どうしてこうも最悪な場面で再会するのか。

無関係なうえ迷惑をかけてばかりの彼に、助けを求められないし巻き込めない。

とっさに私が離れようとするより速く、向さんが手を伸ばし、優しく私の手首に触れた。


「顔が真っ青だ。吐き気はない? 少し触るよ」


そっと私の額にもう片方の手で触れる。

伝わる温もりになぜか安心した。

けれど親しげな口調がよくわからない。


「熱はないな……具合が悪いところ申し訳ないけれど確認させてほしい。あの男性と一緒に帰りたい? もしかして恋人ですか?」


瑛斗に聞こえないよう、後半部分をとくに小声で尋ねる。


「従弟です。結婚を強要されていて……一緒に帰りたくないです」


吐き気を伴う体調不良のせいか頭が回らず、不必要な情報まで口にしてしまったが取り繕う余裕がなかった。


「わかった」


綺麗な二重の目で私を覗き込んで力強くうなずき、小さくつぶやく。


「……大丈夫だから任せてほしい」


発言を聞き返す前に、彼は私の手首に触れたまま、さりげなく自分の背中に庇った。















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