婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「恐れ入りますが、お客様。彼女は我々の同僚です。本人の希望もあり、こちらで休ませますのでどうかお任せください」


「俺は彼女の親族です。ただの同僚のあなたよりよく知っています。看病は俺がしますからご心配なく。蕗を返してください」


語気荒く反論すると同時に伸びてきた瑛斗の手に、体がすくむ。

向さんはすかさず瑛斗を避けて私を守ってくれた。


「……どこかで見かけたと思ったら、動画で人気の副操縦士さんじゃないですか? こんなところで客ともめている姿を見られたら困るのはそちらでは? 企業イメージが損なわれませんか?」


片眉を上げて皮肉な微笑みを浮かべる従弟の、的確な指摘に血の気が引く。


「自分の恋人を守るのは当然ですから、会社も納得してくれますよ」


さらりと向さんが返答する。

予想外の発言に従弟は口を半開きにして目を見開く。

私も向さんの背中で瞬きを繰り返す。

思わず声を発しそうになったが、なだめるように手首を握る指に軽く力を込められ、彼が私のために演技しているのだと遅れて理解した。


「そんなわけがない! 蕗に恋人がいるなんて聞いていない!」


「き、聞かれてもいないのにわざわざ話さないでしょ。何度も瑛斗との結婚は嫌だと言ったし、断わったはずよ」


向さんに同調するように告げる。
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