婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「本当に付き合っているのか? 叔母さんは知っているのか?」


「この間の休日も、店を手伝う彼女を眺めながらContrailでカフェラテをいただきました。オーナーに確認してもらって構いませんよ」


落ち着いて受け答えをする向さんに、従弟は悔しそうに顔を歪め、言い放つ。


「そんなもの、口裏を合わせればなんとでもなる」


「先ほどから、彼女は私が触れるのを一度も拒否していませんよ。証明しましょうか?」


そう言って振り返った彼は、私の手首から手を離す。

離れていく温もりにほんの少しのさみしさを感じてしまい、心が乱れる。


「……蕗、おいで」


甘い呼びかけに、まるで条件反射のように体が動く。

顔が熱い。

引き寄せられるように片腕を広げた彼の元に足が進む。

受け止めてくれたがっしりした広い胸と長い腕に力が抜ける。

初めて名前を呼ばれた驚きと理由のわからない緊張で心がざわめき、体調不良とは関係ない熱が体を駆け巡る。


「蕗、俺は……納得していないからな。待っていろ」


先ほどの激情とは違う、低くすごむような声で言い残し、瑛斗は大股で去って行った。

従弟の姿が見えなくなって大きく息を吐いた後、慌てて向さんを見上げて離れた。
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