婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
店内と周囲に瑛斗の姿が見えないのを確認した向さんは、具合が悪くなったらすぐに話を止めるよう私に念押しする。


「改めて、この間はありがとう。あれからなにか変わったことはなかった? 嫌がらせがあったとか……」


「いいえ、なにもありません。お礼を言うのは私の方です。あのときは本当に申し訳ございませんでした。スマートフォンは壊れていませんか?」


「大丈夫。この間カフェに行って、君がオーナーの娘で、同じグループ会社勤務だと教えてもらった。君は庇ってくれたのに、巻き込んでしまって申し訳ない。嫌な、怖い思いをさせてしまっただろうし、ずっと謝りたかったんだがなかなか会いに行けず、申し訳ない」


母に私の連絡先を教えようかと言われたそうだが、直接謝罪したいからと断わったらしい。


「オーナーには俺が謝るまで黙っていてほしいとお願いしたんだ」


思いがけない話の展開に驚く。

母からはなにも聞いていなかった。

私の心中を察したかのように話す向さんに首を横に振る。


「向さんのせいではないですし、謝らないでください。謝るべきは私です。店をもう一度訪ねてくださり、ありがとうございました」
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