婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「俺に守らせて」


この短い時間に何度も言われた言葉に心が揺れ動く。


「でも……」


「俺も少なからずContrailを大切に思っている。オーナーは迷惑をかける可能性の高い俺をいつも温かく迎えてくれた。なによりも君が〝るうくん〟といつも呼んでくれた、思い出の場所を失いたくない」


懐かしい呼び名に思わず目を見張る。


どうして、向さんがその名を? 


まさかあの男の子は……。



「子どもだったせいか記憶が曖昧なうえ、母は店名を間違えて覚えていて見つけられなかった。思い出の女の子に会いたくてずいぶん捜したんだ。……俺の名前、知ってる?」


「向……琉生、さん」


そっとフルネームを口にした私に、彼が柔らかく目を細める。

当時の記憶がよみがえったのか、向さんはおかしそうに声を漏らした。

残念ながら私はまったく覚えておらず、羞恥と驚きで体の奥がカッと熱を持つ。


「仲良しだった俺たちなら、きっとうまくやっていける。きっかけはお互いのメリット、目的のための結婚でも、穏やかな関係を築きたい」


なにも知らなかった子どもの頃と今では、事情も取り巻く環境もなにもかも違う。

でも再会できた喜びと予想外の状況と展開のせいか、頭が上手く働かない。
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