婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
3.夫婦生活の範囲
「体調はどう?」
衝撃的なプロポーズの直後とは思えないほど落ち着いた物言いで、向さんが尋ねる。
「大丈夫です、ありがとうございます」
抱えていた心配や問題の、一応の解決策が見つかって安心したせいだろうか。
体調はずいぶん良くなっていた。
「よかった。顔色もさっきよりよくなったし、食欲は? なにも食べてないよな」
「ええと、大阪で妹と軽めの早い夕食をとりました。向さんこそ召し上がっていないんじゃ……」
「琉生」
向さんが私の手を握ったまま、発言を柔らかく遮る。
「これからは同じ名字になるんだから、名前で呼ぶように」
ゆっくりと長い指を絡めた向さんの言葉に、収まったはずの頬の熱がぶり返す。
「あの頃の愛称も気に入っていたが、これからは名前を呼ばれたい」
「……琉生、さん」
彼の真剣な目になぜか緊張と恥ずかしさを抱えつつ、小声で名前を呼ぶ。
すると嬉しそうに白い歯を見せた。
「呼び捨てでいいけどな」
つぶやく声には聞こえないふりをし、再度食事について質問した。
どうやらコーヒーショップに向かう途中で、手早くおにぎりなど胃に優しい食べ物を購入してくれていたそうだ。
温かな気遣いに胸がじんわりと熱を帯びる。
衝撃的なプロポーズの直後とは思えないほど落ち着いた物言いで、向さんが尋ねる。
「大丈夫です、ありがとうございます」
抱えていた心配や問題の、一応の解決策が見つかって安心したせいだろうか。
体調はずいぶん良くなっていた。
「よかった。顔色もさっきよりよくなったし、食欲は? なにも食べてないよな」
「ええと、大阪で妹と軽めの早い夕食をとりました。向さんこそ召し上がっていないんじゃ……」
「琉生」
向さんが私の手を握ったまま、発言を柔らかく遮る。
「これからは同じ名字になるんだから、名前で呼ぶように」
ゆっくりと長い指を絡めた向さんの言葉に、収まったはずの頬の熱がぶり返す。
「あの頃の愛称も気に入っていたが、これからは名前を呼ばれたい」
「……琉生、さん」
彼の真剣な目になぜか緊張と恥ずかしさを抱えつつ、小声で名前を呼ぶ。
すると嬉しそうに白い歯を見せた。
「呼び捨てでいいけどな」
つぶやく声には聞こえないふりをし、再度食事について質問した。
どうやらコーヒーショップに向かう途中で、手早くおにぎりなど胃に優しい食べ物を購入してくれていたそうだ。
温かな気遣いに胸がじんわりと熱を帯びる。