婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「さっきも言ったけど、ゆっくり夫婦になれたらいい。だから蕗の気持ちが伴わないのに無理強いはもちろん、手を出したりもしない」


まさにさっき私が考えていた件を切り出され、息をのむ。

同時にどう反応するのが正解かわからずに目が泳ぐ。


「ちなみに俺は長男だけど家業は弟が継ぐし、後継者云々の心配はしなくていい」


用意した器に湯を注ぎながら、実家の家業について説明してくれた。

噂どおり御実家は不動産会社を営んでいるらしい。

どこまでも先回りして私の負担や心配事を払拭してくれる態度に胸が詰まる。


「蕗には今の俺をもっと知ってほしいし、俺も蕗を知りたい」


ケトルを台座に戻した琉生さんが真摯な目で私を見つめる。


「私も、琉生さんを知りたいし……近づきたいです」


伝えたい事柄や気持ちがたくさんあるなか、やっとの思いで口にした私に琉生さんは柔らかく目を細める。


「ありがとう。じゃあ少しずつでいいから、もっとくだけた口調で話してくれたら嬉しい」


「はい、じゃなくて、うん」


慌てて言い直す。

すると彼がそっと骨ばった指を伸ばして、私の髪の毛先をいたずらにつまんだ。
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