婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「蕗、一緒に住もう」


唐突な誘いに食器を拭く指が思わず止まる。


「え、でも、まだ母と琉生さんのご両親に結婚の報告もしていないし、そんなにすべてを急がなくても……」


「それはこれから伝えたらいい。オーナーには改めてご挨拶に伺う。俺の両親にもきちんと話す」


あっさり一蹴される。


「蕗の自宅を従弟は知っているし、今後もやって来る可能性がある。今日だってあんなメッセージを送ってくるくらいだ。離れていたら蕗を守れない」


それでなくても自分は家を不在にする時間は長く、すぐに電話に出られない場合も多いからと琉生さんが厳しい表情で口にする。


「カフェの存続のためにもできるだけ早く婚姻届を出そう。蕗の安全と俺のためにもここに引っ越してきてほしい」


「でも瑛斗もさすがに結婚すると知ったら引き下がるんじゃ……」


「今日のように強引な真似をされたり、万が一離婚を迫られたりしたら?」


彼の問いかけに、従弟を思い浮かべる。

ひかりさんが母に毎日執拗に連絡しているように、瑛斗は自宅に何度もやってくるかもしれない。

私の自宅は管理人が常駐しておらず、ここより防犯性はずいぶん低い。

私の迷いに気づいたのか、琉生さんが私の手から食器を取り上げる。

そして大きな手で安心させるように私の頭を撫でた。
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